時速3kmと時速5kmの平均

僕が小学校のころに塾の先生に出題された問題で、

「A君は家から学校まで行きは時速3kmで行き、帰りは時速5kmで帰りました。A君は平均時速何kmで行ったでしょう」

というのがあった。もちろん引っ掛け問題ではないので、行きと全く同じ道を辿って帰ったとしてもらいたい。

初めのうちは「え?家から学校までの距離は?」と思ったが、一向にその情報が与えられない。手がかりがつかめない。どこから手をつけていいかわからない。しばし途方にくれたあげく、最終的に「そうか、情報が与えられないと言うことは、別に距離は何だって同じだということだな」と悟り、勝手に15kmと仮定して答えを出した覚えがある。今から考えると危険である。

それでも「時速4km」じゃないことに納得いかない人のために、最近になって、たぶん一番わかりやすい説明を考えた。
ちなみに正しくは3と5の「調和平均」と言って、「逆数を(相加)平均したものの逆数」、つまり、 \frac{2}{(\frac{1}{3})+(\frac{1}{5})}=\frac{2*3*5}{3+5}=\frac{15}{4} である。


まず確認。平均の速さは「全体の距離」÷「全体の時間」である。20kmの道を5時間かけて行くなら、途中どれだけ走ろうが休もうが、平均時速は4kmである。

時速3kmと時速5kmの平均が時速4kmになるのは、例えば以下の場合である。

「A君は時速3kmで1時間行き、そのあと時速5kmで1時間行きました。平均時速は何kmでしょう」

この場合は、つまりは2時間で8km行くわけで、平均時速は \frac{3*1+5*1}{1+1}=\frac{3+5}{2}=4 kmとなる。時間が一緒ならば普通の(相加)平均でいいわけだ。

これが時間が違ってくると、例えば問題が

「A君は時速3kmで2時間行き、そのあと時速5kmで1時間行きました。平均時速は何kmでしょう」

となると、つまりは3時間で3*2+5=11km行くわけで、平均時速は \frac{3*2+5*1}{2+1}=\frac{11}{3} kmとなる。距離の平均は時間の比率によって加重がかかるのである。

冒頭の問題では、「距離が等しい」ということは、時間の比は速さの比の逆比である。

「A君は時速3kmで5時間行き、そのあと時速5kmで3時間行きました。平均時速は何kmでしょう」

と同じなので、平均時速は \frac{3*5+5*3}{5+3}=\frac{15}{4} kmとなる。

一般に速さxと速さyで、それぞれ同じ距離を行く場合、その時間の比はy:xなので、その平均の速さは \frac{xy+yx}{y+x}=\frac{2xy}{x+y} である。